総合診療医とは
総合診療が求められる理由
どうして今、都内の大学病院で総合診療医の育成が求められているのか。
板橋区を例にご説明いたします。
板橋区も老年人口割合が20%を超える
板橋区は東京都の北西部に位置する人口約54万人の生活都市であり、歴史的背景から住宅都市として知られています。最近の人口推移から全国の市町村と同じく老年人口の割合が多くなり、ここ数年区総人口に大きな変化がないのにもかかわらず老年人口割合が20%を超え高齢者は増加の一途を辿っています。
日本大学医学部附属板橋病院(以後、板橋病院)は特定機能病院として板橋区の先進医療を支えていますが、上記のような人口変化から高齢者が多くなり、医療依存度の高い在宅療養者などが増え、大学病院といえども高度医療ばかりでなく地域に即した医療を展開する必要が出てきました。
包括的な診療を行う医師の育成
また35科を超える診療科を有している病院であり、患者一人が複数の診療科を受診していることが多く、疾患が多岐にわたり、医師は患者ではなく専門疾患を診る傾向が強く包括的な診療を行うことが難しくなっています。
このようなことから地域の医療状況を把握し適切に対応でき、また疾患ばかりでなく心理社会的側面なども含めて患者の全体像を的確に捉える能力を有する医師が求められたため、総合診療専門医を養成することとなりました。
大学病院が地域医療の活性化に取り組む
大学病院で総合診療専門医を養成することは、大学病院と地域の関係性を深め、養成された専門医が地域で活躍することにより一定以上の医療水準を担保でき、専門的医療や高度先進医療が必要な場合、円滑なやり取りを行えることが期待できると考えています。このことは、すなわち地域医療の活性化であり医療提供体制の再構築に繋がると確信しています。
地域医療を見直す今、大学病院の役割は、高度先進医療はもちろんのこと、専攻医を通じた人事交流を促進することで、その地域の病院・クリニックとの関わりを深くし、診療においても地域住民の健康問題に対する継続的・連続的なアプローチをその地域独自のものとして提供できるよう努力することだと思います。
総合診療医専門研修プログラムは東京都・埼玉県・青森県・岩手県、茨城県でそれを実践し、総合診療医の育成を行います。また、プログラムを通じてその地域の問題点を抽出し、連携施設と共にその課題に取り組み、より良い地域医療、さらにはより良い街づくりに貢献したいと考えています。